今回は趣向を変えまして、アカデミックな話題でも…。
クロモリ材。なんだかエラそうな感じですね。あのモリワキモンスターもクロモリフレームだったそうですし。
クロモリ材のイメージは、一般的には高強度、高剛性、でしょうか。
でも、ホントでしょうか?
世の中で一般的に使われている鉄は、ほぼ全てが鉄の合金です。
そしてクロモリ材も正しくは、クロムモリブデン鋼といい、鉄の合金です。
具体的には、鉄にごく微量のクロムやモリブデン、炭素、マンガンなど(全て1%以下)を添加した合金です。
クロモリ材のイメージは、一般的には高強度、高剛性、でしょうか。
でも、ホントでしょうか?
世の中で一般的に使われている鉄は、ほぼ全てが鉄の合金です。
そしてクロモリ材も正しくは、クロムモリブデン鋼といい、鉄の合金です。
具体的には、鉄にごく微量のクロムやモリブデン、炭素、マンガンなど(全て1%以下)を添加した合金です。
さて、ここで機械部品に良く使われる一般構造用圧延鋼材(SS材)と、クロモリ材を比較してみましょう。
両方とも鉄の合金です。要するに鉄なのです。
両方とも鉄の合金です。要するに鉄なのです。
更に、ヤング率という数値に登場してもらいます。剛性を語るには必須な数値です。
ヤング率とは縦弾性係数とも言いまして、応力と歪み量の比を示す値です。簡単に言うと、この値が大きい方が歪みにくく、剛性が高いのです。
ヤング率とは縦弾性係数とも言いまして、応力と歪み量の比を示す値です。簡単に言うと、この値が大きい方が歪みにくく、剛性が高いのです。
クロモリ材とSS材のヤング率、実は限りなく同じです。何故ならば、両方とも鋼(はがね)だからです。(厳密に言えば1%程度違いますが、実際の使い勝手としては無視できる違いです)
つまりヤング率が同じと言うことは、クロモリ材もSS材も剛性は同じ!と言うことなのです。
つまりヤング率が同じと言うことは、クロモリ材もSS材も剛性は同じ!と言うことなのです。
(余談ですが、アルミ合金でも同じことが言えます。1000番台でも5000番台でも7000番台でも、アルミ合金のヤング率は殆ど同じです。つまり剛性も同じです)
実験すると、下記のようになります。
棒の一端を固定し、自由端に同じ荷重A kgfを掛けます。その場合の変形量を測ると、クロモリ材もSS材も同じです。
棒の一端を固定し、自由端に同じ荷重A kgfを掛けます。その場合の変形量を測ると、クロモリ材もSS材も同じです。
荷重が弾性変形内である限り、これは常に保たれます。
※弾性変形とは、荷重を抜くと元に戻る変形のことです。弾性変形域を超えて荷重を加えると、変形は元に戻らなくなります。これを塑性変形(永久変形)といいます。
と言っても、一般的にクロモリ材の方が強いって言いますよね。どういうことなんでしょうか。
これはつまり、「強度が高い」ということなんです。強度が高いということは、弾性変形に耐えられる荷重値が大きいということです。
これはつまり、「強度が高い」ということなんです。強度が高いということは、弾性変形に耐えられる荷重値が大きいということです。
まったく同じ形状の2本の棒に、先程と同じように荷重を掛けます。A kgfを超えて荷重を掛け続けると、B kgfでSS材は塑性変形を起こし、元に戻らなくなってしまいましたが、クロモリ材はまだ大丈夫です。これが、クロモリ材が強度が高いということなのです。
材料に加わる歪と応力の関係をイメージ図にすると、こうなります。
降伏点までは、クロモリ材もSS材も、歪みと応力の比率(ヤング率)は同じです。つまり剛性は同じです。
しかし降伏点はクロモリ材のほうが高く、より高い応力に耐えられる。つまり強度が高いのです。
簡単に言うと、降伏点までの直線の傾きが剛性を示し、降伏点の大小が強度を示します。
しかし降伏点はクロモリ材のほうが高く、より高い応力に耐えられる。つまり強度が高いのです。
簡単に言うと、降伏点までの直線の傾きが剛性を示し、降伏点の大小が強度を示します。
実際に物を設計する時のことを考えてみましょう。
棒で作られた部品の剛性を上げるために、直径を大きくします。当然剛性は上がりますが、重量もアップします。直径を倍にすれば重量は4倍です。これではたまりません。
ですので、軽量化するために中空(パイプ)にします。中空にすることにより、剛性を上げながら軽量化を図ることが出来ます。
逆を言えば、同じ重量をキープしつつ、剛性を上げることが可能です。
また言うまでもありませんが、同じ直径であれば、中空より無垢のほうが高剛性、高強度です。
これを推し進めようとすると、直径は更に大きくなり、板厚は薄くなります。板厚が薄くなると当然強度が落ちます。
すると、SS材では塑性変形を起こし、壊れてしまいます。
すると、SS材では塑性変形を起こし、壊れてしまいます。
ここでクロモリ材の出番となるのです。
クロモリ材はSS材より強度が高いので、SS材では壊れてしまう薄肉パイプでも、クロモリ材なら壊れなかったりします。
高強度なクロモリ材がここで活きてくるのです。これがクロモリ材の使い方です。
クロモリ材はSS材より強度が高いので、SS材では壊れてしまう薄肉パイプでも、クロモリ材なら壊れなかったりします。
高強度なクロモリ材がここで活きてくるのです。これがクロモリ材の使い方です。
逆を言うと、SS材で十分な強度を持った部品をクロモリ材で作り変えても、剛性が変わらないのですから、性能も変化しません。
ボルトで言うならば、一般的なボルトをクロモリボルトに変えても、そのままでは何も変わりません。
結合剛性を上げたいから締付トルクを上げたい、そのまま締付トルクを上げるとボルトが伸びてしまうので、強度が高いクロモリボルトに変える。
または、高いせん断応力が掛かるので、高強度なボルトが必要だからクロモリボルトを使う。
これが正しいクロモリボルトの使い方です。
結合剛性を上げたいから締付トルクを上げたい、そのまま締付トルクを上げるとボルトが伸びてしまうので、強度が高いクロモリボルトに変える。
または、高いせん断応力が掛かるので、高強度なボルトが必要だからクロモリボルトを使う。
これが正しいクロモリボルトの使い方です。
剛性と強度と言うのは、ややもすれば混同しがちですが、力学的には全く違った概念です。材料力学の初歩中の初歩なのですが、理系大卒の新入社員に聞いても、ヤング率の定義は答えられても、今ひとつキチン説明できなかったりします。(つまり理解できていない)
でも、このあたりを理解すると、バイクの改造もより実を結ぶのではないでしょうか?
でも、このあたりを理解すると、バイクの改造もより実を結ぶのではないでしょうか?
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました(笑)