CB1000Rにガッツリ乗ってみた。

チョイと機会がありまして、CB1000Rを借りたんです。18000km走行の初期型。
CB1000R、実はHSR九州試乗会でちょっと乗ったことがありました。出た時からスタイリングは好きだったので、興味津々で乗ったんですが、その時の感想は『なんだか普通だな…』でした。
だけど、なんだか引っかかるものはあったんですよね。ちゃんと乗ってみたいな、とずっと思ってました。

 

んで、今回の試乗ですけども、
ちょっとビックリしました。とても良くて。
一日目の半日ツーリングで印象が全く変わりました。

 

一番良かったのは、普通に流しているときに気持ち良くてなんだか楽しかったこと。これがすごく意外でした。
ENGは初代CBR1000RRベースなのでバリバリのスーパースポーツで、味もそっけもないものだと思ってましたからね。

でも実は、CB1000Rってシリンダーヘッドは新規なんですよね。CBRのダウンドラフトからホリゾンタルにするべく、ヘッドを完全に一から作り直している。それはモノバックボーンフレームにするためだと思われます。ダウンドラフトだとフレームに吸気系が当たっちゃいますからね。

CB1000R フレーム+エンジン

 

CB1000Rエンジン

 

CB1000R エンジン+吸気系

 

2004年式 CBR1000RRシリンダーヘッド(画像は全てHonda Webサイトより)

 

当然、カムも新規です。ピストンも専用。

シリンダーヘッドを新規製作する際に、トップエンドは潔く削って、それを中低速に振り分けてます。少しローギヤードに振ったファイナルレシオと相まって、日常域ではベースのCBR1000RRよりも扱い易くて速い、らしいです。
その分、余裕ができたというかなんというか、飛ばさなくてもゆとりを感じて、ダラッと流してもなんだかいいんです。これはホントに意外でした。いい意味で、エンジンのザラツキが有って、それが何だかいい。

 

車体も良かった。普通、このクラスのストリートファイター系は、ベースとなったスーパースポーツのアルミフレームを流用します(多少手を加えることはある)。ヤマハのMT-10も、スズキのGSX-S1000も(【訂正】GSX-S1000は専用フレームでした。謹んで訂正します<(__)>)BMWのS1000Rも。カワサキのZ1000だけはアルミの専用設計ですね。だけどこのCB1000Rは鉄のモノバックボーンフレームを新規設計で採用しました。それがすごくいい。剛性バランスが素晴らしい。

なにがいいかって、安定感とタイヤの接地感。そしてクルクルとよく曲がるんだけど、意図より曲がり過ぎずにニュートラル。これも驚きました。結果、これもすごく面白い。

あと、軽いですね。SPEC以上に軽い。マスの集中化ってこういうことなんだな、と体感できます。これは街中のUターンでも感じることなので、その辺をチョロチョロ乗るのも面白い。いい。

 

他に良かったのはオートシフター。これはCB1300SFやCBR1000RRでも体験したことがあるんですが、コーナーに向けてシフトダウンの時にオートブリッピングしてくれるのは、楽な上にとても気持ちがいい。低回転域で若干シフトショックを感じるときもありますが、走り始めたらクラッチ操作は不要なのは良いですね。

 

少々ワイルドな排気音も結構いいけど、回した時にもう少し抜けるような音だったらなお良かったかな。ちょっとフン詰まり感がないでもない。でも6~7000rpm辺りまでだったら良い感じです。

 

っと、褒めちぎってますが、唯一気になったのが、停止からの微速スタート時に、スロットルとENGが直結しない感じが有ったこと。回転数を数百rpm上げたい感じで微妙にスロットルを開けてもツイて来ず、タイヤが動き始めてから回転が上がるみたいな感じで、ちょっと気持ち悪い。このバイクはTBW(スロットルバイワイヤ)で、物理的なストットルワイヤーが存在せず、この辺の制御は全てプログラム(設定)次第。多分、微開時のドンツキを嫌ったゆえのセッティングなんだろうけど、ここだけはちょっと気になりました。特にSPORTSモードで顕著でしたね。慣れれば「こんなもん」となるレベルかとは思いますが。

 

んで、二日目。
一日目と同じく、早朝出発して昼には戻ってくるパターンで。
一日目は広い阿蘇の道だったので、今日は南下して人吉方面まで行ってみました。クネクネした細かいワインディング(と言うより舗装林道)で、荒れた道も結構あるので、CB1000R的には苦手と思われる道です。

が、ここでもCB1000Rは結構良かった。ガタガタの荒れた路面をものともせず、抜群のスタビリティを発揮して楽しく乗れました。

サスは減衰がしっかり効いているタイプなので柔らかくはないんだけど、変なキックバックもなく、ガタガタをライダーに伝えながらも何事もなかったかのように走れる。やっぱりすげーぞ。フレームのバランスが良いんだろうな。

 

ここで、フレーム剛性について少々。

フレーム剛性には、フレームをバイクの上から見た視点で、縦剛性、横剛性、捩じり剛性の3つのファクターが有ります。

 

まず、縦(前後)剛性。これは、加減速時の車体の安定成分に効きます。特にブレーキング時。わかり易く言うと、ピボットを固定してヘッドパイプに前から入力し、どのくらい変位するかと言った見方です。

近年は飛躍的にブレーキ力もタイヤのグリップ力も上がっているので、縦剛性は上げて、しっかり感を出すのが今のトレンドです。

 

次に横剛性。同じように簡略化して言うと、ピボットを固定してヘッドパイプに横方向に力を加えて、どのくらい横に変位するかと言った数値です。

これは意識して落とすことによって、車体をしならせて曲がり易くする、柔らかい感じを出す、と言う方向で近年は作られていますね。これはスーパースポーツでもネイキッドでも傾向は同じです。もちろん絶対値は全然違うので、比率の問題ですが。

 

最後に捩じり剛性。これはピボットを固定してフロントフォークのアクスルに横方向に入力し、アクスル位置でどのくらい捩じれるか、という数値です。

これは前後の一体感に効きます。これが足りないとフロントタイヤとリアタイヤがバラバラの動きになります。特に外乱が加わった時などに顕著です。これも高めにした方が、車体はシャッキリします。

 

CB1000Rはどうかというと、ヘッドパイプからフロントエンジンハンガーまではかなりしっかりしている構造なので、縦剛性は高そうです。

対してモノバックボーンで横方向の幅は無いので、横剛性は低そう

捩じれ剛性もあまり高くないと思いますが、エンジンハンガーの締結がフロント1点、リアのピボット上下2点の計3点で、上周りは締結が無いので、捩じれの中心は低そう。となると、多少剛性が低くても前後のバラバラ感は感じにくく、逆に柔らかさがメリットとして出てくるかもしれません。

(前後タイヤを結んだ軸から遠いところに捩じり中心があると、数値以上に『捩じれた感じ』を受けやすい)

 

CB1000R フレーム構成(画像はHonda Webサイトより)

 

まとめると。

・縦剛性はしっかり取りつつ、

・横剛性は低めに設定して外乱を逃がしながら曲がりやすくする。

・捩じり剛性はそこまで高くなさそうだけど、捩じり中心を下げて前後がバラバラになる不安感を減らしている。

と言う感じでしょうか。ヘッドパイプからフロントのエンジンハンガー周りとピボット周りの造りが効いていると思います。
この仕上りは凄いなぁ。

 

 

 

二日間で下道を中心に400km弱乗りましたが、飽きることなく楽しく乗れました。いいなぁ、これ…。思わずGooBikeとか検索しちゃいました…。

 

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久しぶりにまともなブログを、思わず書いてしまいました。

その位感心したということで、ひとつ。